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センス・オブ・ワンダー

割と働くことが好きだった。今でも好きだけど、もっと好きだった。

 

だから、子どもと一緒のゆったりとした(実際にはまったくゆったりしていないけれど)生活は、これまでの自分の生活とは180度違ったものに感じられた。

 

特に、ようちえんの2年間は格別だった。

 

シュタイナー教育をベースにしたようちえんは、ファンタジーのかたまりだった。

 

私たち誰もが子どもだったことがあるんだけど、人間はファンタジーでできているんだと強く感じた時間だった。

 

お部屋遊びも見立てで、森の中に変わる。

お外の森遊びでは、枝や葉っぱでおうちを作る。

日が暮れると夜の女王がやってきて、子どもたちをさらうから早く帰らなければならない。

子どもたちは毎日冒険の日々。

まさにレイチェル・カーソンの「センス・オブ・ワンダー」の世界だった。

 

それまでずっと仕事でつながる友だちばかりだったのが、はじめて「ママ友」たちと出会う。

 

教師会と父母会が一緒に運営する形式のようちえんだったから、親のかかわりは密だった。

それはもう、転職するくらいの覚悟をもって臨んだ。

 

子どもたちは、お誕生日のときに天使としての名前をもらう。

わたしの子どもは、年中のときが「なりきり天使」

年長のときが「ゆっくり天使」だった。

 

今でもゆっくり天使な子どもは、本人なりに一所懸命にやっている。それをわたしがおおらかに見ていられないだけ。

 

あの2年間、子どもと一緒に、わたしもファンタジーに包まれた。

若いママと一緒に編み物をし、布を虹色に染めた。

おやつを手作りし、ママたちとお茶を飲みながら大笑いした。

 

自分ももう一度、ファンタジーな子ども時代を辿り、ほんの少し成長した。