強制的に道を閉ざされることもある。
悲しい恋だった。約束しても彼は来ない。(どこぞのJPOPで聞いたような歌詞みたいだけど)
その日も結局何らかの都合で彼は約束の場所に来なかった。
待ちくたびれて、落ち込んで、かばんをぶらぶらさせながら、夜の住宅街を歩いていた。
魔が差したというけれど、本当だなと。
つい、脇道にそれて遠回りしながら帰っていた。
それがいけなかったんだろう。
気が抜けていたわたしのそばを、さっとスクーターが通り過ぎ、わたしの持っていたかばんをひったくって行った。
一瞬何が起きたのかわからなかった。
かばんの中には、お財布、おろしたばかりの紙幣、携帯電話、手帳・・・大事なものが全部入っていた。
どうやって家に帰ったのかもあまり覚えていない。
だけど、一つだけはっきりと覚えているのは、携帯電話がなくなったことで、彼に連絡ができなくなったこと。
うまくいっていなかった彼だったので、なるべく彼の電話番号を覚えないように努力していた。だから、携帯電話がなくなったとき、
「終わったな」と悟ったのだ。
後日、現金だけが抜かれた状態で、かばんごと投げ捨てられていたのが見つかった。
被害者であるわたしだけが指紋をとられて、加害者がどうなったのか、報告は受けていない。
同時に、彼とは本当に終わった。
これも大きな転機のひとつだったなと、思い返すことがある。