広島は雨の印象が強い。
雨に煙った夜の街。川にかかる橋。
たくさんの青空も知っているはずなのに、なぜか雨のことばかり思い出す。
学校を卒業するとき、何の仕事をしたいのか、すればいいのか悩んだ。
結局、先に広島に引っ越した友人に誘われて広島採用で証券会社に入った。
大好きな友だちなんだけど、彼女もやっぱり人生に悩んでいて、結局宗教の道に進んだ。
その彼女の誘いで、私もなんどか礼拝に参加し、一泊研修にも参加したけれど、どうしてものめりこむことはできずに、距離を置いた。
後日、その宗教は色んな意味で有名になるんだけれど、彼女がそのことをどう思っているのか、聞いたことはない。
振り返ってみると、あの日常は大きな転機だったなと。
一緒に朝のパンを買いに行って、まじめな話も、ばか話もたくさん話して、笑って、泣いて。
その友だちとの道は大きく開いてしまったけれど、人生の中でもっとも繊細だった時期に、一緒に悩んだことは宝物。
あのとき広島で彼女と過ごしたから今があるんだと思うと、とても不思議な気持ちになる。